2025/07/29 11:30

こんにちは
Sui Worksです。



今日は、『Astro Outアストロアウト』のゲームデザインに関する記事です。


本作は、ワーカープレイスメント×カードプレイ×リソースマネージメントを軸とした中量級~重量級のボードゲームです。
細かいルールはコチラから紹介しているので、こちらもぜひ!


さて、この記事ではそういったゲームデザインの裏側を紹介していきます。

もともとは

当初、このゲームは「非対称 × エンジンビルド」をテーマに設計されていました。
そこから多くの変遷を経て、現在の形にたどり着いています。
(その経緯については、また別の機会にご紹介できればと思います)


ワーカープレイスメント

本作では、入力のメカニクスにシンプルな「ワーカープレイスメント」を採用しています。
その理由はシンプルで、「カードプレイに集中してもらうため」です。

ワーカープレイスメントは、現在では非常にベーシックなメカニズムとなっており、
アクションドラフトに近いシンプルなものから、複雑な制約を伴うものまで幅広いスタイルが存在します。

『Astro Out』では、その中間に位置するような構成を目指しました。
アクションの選択における自由度はある程度確保しつつも、ワーカーを配置する際には「お金が必要」という制約を設けています。

これは単に難易度調整というよりも、「世界観との整合性」を意識した設計です。


例えば、実際の宇宙ビジネスでは、何を行うにもコストが発生する。
そういった感覚をゲームにも落とし込みたいと考えました。

このアプローチは、たとえば『バラージ』などの作品からも影響を受けています。



カードプレイ

本作の中心は「カードプレイ」にあります。
このジャンルの先行作品は多く、代表的な例としては『テラフォーミング・マーズ』『ウィングスパン』『アーク・ノヴァ』『アース』などが挙げられます。

それらの多くは、山札からの引き(いわゆる「ガチャ引き」)によってカードを獲得する構造になっています。
この方式は、プレイヤーに戦略の揺らぎや期待感を与えつつ、ダウンタイム中にも考える余地があるという点で優れています。


一方で、引いたカードによって展開が大きく左右されることへの不公平感が生まれるケースもあります。

そこで『Astro Out』では、山札からの引きを極力排除し、
「ディスプレイからの獲得」をメインとする構造にしました。

さらに、ディスプレイにはダッチオークション形式(位置によって価格が変動する仕組み)を取り入れ、
良いカードを取るためには常に「お金」とのバランスを考える必要があります。


この形式を支えるために、以下のような設計を意識しています。

① テキストをできるだけ排除し、アイコン化を徹底

カードの効果が視覚的にすぐ把握できるようにし、選択のスピード感を重視しています。

② 絶対的に強いカードを減らし、状況によって活躍するカードを増やす

シチュエーションによって評価が変わるカードを増やすことで、
先取りの優位性をやや抑え、戦術的な多様性が生まれるように設計しています。

単体で突出したパワーを持つカードよりも、「組み合わせによって効果が高まるカード」を中心に構成しており、
プレイヤーが自らの戦略でコンボを構築する楽しさを重視しています。



リソースマネージメント

『Astro Out』では、リソースの中心を「お金」に据えています。
ワーカーの配置やカードの獲得・プレイなど、多くのアクションでお金が必要になります。

この経済構造を活かすために、ゲームには「融資」の仕組みを組み込みました。
プレイヤーはお金を得るために大企業からの融資を受けることができますが、ゲーム終了時にはその返済が求められます。

「お金は欲しい、でも返済が怖い」
この構造が、ほどよいジレンマとして機能しています。


また、ゲーム内の資源は「赤・黄・白・黒」の4色のエネルギーで構成されており、性能差はありません。

これは、エンジンビルドの自由度を保つための設計です。
資源に性能差を設けると、特定の資源を引けるかどうかで戦略の幅が狭まりやすくなるため、それを避けました。

代わりに、「状況によって必要な資源が変わる」ようにバランスを調整しています。

万能資源である「エネルギーチップ」も存在しますが、
これはエンジンビルドのトリガーには使えないため、使いどころが問われる選択肢として機能します。



宇宙の要素

宇宙というテーマは、非常に人気の高いテーマであり、先行作品がたくさんあります。
テラフォーミングマーズ、ビヨンドザサン、最近ではSETIという作品が話題を呼んでいます。

特に本作は、カードプレイ・ワーカープレイスメント・リソースマネージメントといった
中核となるメカニクスに注力し、テーマとシステムの両立を目指しています。


モジュール的な拡張

本作には、いくつかの拡張が用意されています。
ここでは、それらとベースゲームとの関係性について触れておきたいと思います。

まず大前提として、ベースゲーム単体で十分にプレイが成立するよう設計されています。
そのため、ゲームが過度に複雑になりすぎないよう、意図的に一部の要素は取り除いています。

ある程度ボードゲームに慣れた方であれば、ルール理解に苦労することはないはずですし、
これまでのSui Works作品を遊んだことがある方なら、随所に共通するエッセンスを感じていただけると思います。


とはいえ、本作は中量級~重量級のボードゲームであり、構造上はいくらでも複雑にする余地があります。
そうした要素を切り分けたものが、「モジュール型拡張」として設けられています。


これらの拡張は、ベースゲームの根幹を変えることなく、プレイ体験に“刺激”や“変化”を加えるためのもので、
導入することでより高い戦略性や難易度を楽しめるようになります。

イメージとしては、『ティーフェンタールの酒場』の拡張形式に近いかもしれません。
プレイヤーの好みに応じて、必要なだけモジュールを加えることで、プレイ感をカスタマイズできる構成です。



おわりに

『Astro Out アストロアウト』は、ワーカープレイスメント、カードプレイ、リソースマネージメントといった王道の要素を軸にしながら、それぞれの要素が互いに補完し合うよう丁寧に設計されています。

ワーカーの配置にはお金が必要であり、資源の使い道には常に選択とジレンマが付きまといます。

カードプレイにおいては、ガチャ引きを避けたディスプレイ方式を採用し、見通しと戦略性のあるプレイ感を重視しました。

また、テーマである「宇宙開発」の世界観とも噛み合う形で、融資や資源の扱いにもリアリティを持たせています。

さらに、モジュール形式での拡張を導入できる設計により、
プレイヤーごとの好みやプレイスタイルに応じた自由なカスタマイズも可能です。

ベースゲーム単体でも十分に楽しめる内容でありながら、
より深い戦略性を求めるプレイヤーに向けた拡張性も用意されている、
そんな“広がり”のあるゲームに仕上がっています。



引き続きよろしくお願いいたします!!

2025年8月12日21時から、プロジェクト開始です!

https://www.kickstarter.com/projects/sui-works/astro-out